ロベルトは受け取った王冠を一旦ルビディルに預ける。戴冠式まではまだ、これを彼が被ることは許されない。

 元国王は次いで向き直り、レクシオールとリュミエールにも頭を下げた。

「ハーケンブルグ公爵、そしてその婚約者リュミエール嬢……今回のことは私の不徳が原因で起こったことだ。あのような息子に育ててしまった自分を恥ずかしく思う。虫が良い話ではあるが、これからもこの国の柱として、ロベルトと共に国民たちの助けとなってやってくれまいか」
「もちろんでございます……。我が誇りに賭けて、次期国王とこのリーベルト王国をお守りすることをここで誓わせていただきます。……おい、エル?」

 レクシオールはひざまづき、深く礼を取ったが、リュミエールはそれに続くことができない。

 彼女の瞳はこの時、ロベルト第二王子の方向へ向いていた。

 なぜならば……誰も見ていないところで、彼が懐から取り出した銀色の眼鏡とともに茶目っ気たっぷりにウインクをして見せたのがちらりと見えたからだ。

(……えっ!? ええっ!? も、もしかして…………? フ、フフ、フレ……ディ、なの!?)
「こら、なにを驚いている。陛下の御前だぞ……」
「はっ……!? も、申し訳ありませんでした……私も、レックスと共にこの国の為にこの身を尽くします」