「や、やめろっ! そんな目で見るな! 私は次期国王になるものだぞ! お前ら、こんな無礼を働いてただで済むと思うなァッ! 全員死罪にするぞ! 離せ、離せぇぇぇっ!!」

 その王太子の姿はもはや王族の気品などどこにもなく、憐れみをこもった視線が全員から降り注ぐ。

 元王太子は髪を振り乱しながら兵士に体を引きずられてゆき、扉が閉じられるとやがてその声は小さく遠ざかって行った……。

「ふう……皆の者、聞いてくれ」

 そして国王は――なんと頭に乗った王冠を外し、居並ぶ重臣に頭を下げた。

「あれ程までに我が息子が増長していたのに気付けなかった私にも今回のことは責任があろう。余は本日を持ち王位を退き、これを第二王子であるロベルトに譲ることを宣言する」

 重臣たちの間から大きなどよめきが上がったが……それは次第にゆっくりと歓声へと移り変わってゆく。

 恭しく前に進み出たロベルトの手に、国王はそれを預ける。

「正式な手続きまではまだ時間がかかるであろうが……この国を、よろしく頼むぞ……」
「ハッ! この身命を賭し、国に尽くす覚悟でおります!」