「リュ、リュミエール……そうか。ようやく、私の愛を感じてくれたのだな! さ、さあ……あんな冷血公爵など放って私の後ろに乗り、王城にて再度婚約を――」

 だが、その笑顔もそこまでだった。

 ――バチィッ!

「――ふざけないで!!」

 衝撃と怒声が同時にカシウスの頬を張り飛ばす。
 王太子はあまりの事によろめき、その場に膝をついてリュミエールを見上げる。

「な……!? 何故……、何故なのだ」
「それは私が聞きたいです! サンドラ姉様とあなたは永遠の愛を誓ったはずでしょう!? それなのに、あなたはどうして彼女を守ろうともせず……こんな、ことを。本当に誰かを愛したことがあるんだったら、こんな酷いことできるはずがないです! 私から、大切な人を奪おうとしないで――!」
「ち、違う……あれは真実の愛ではなかったのだ! 私はリュミエール、お前を――!」
「あなたとは、二度と話したくありませんっ……」
「待って……! 待て、待つんだ!」

 リュミエールは涙を流しながら背中を向けて引き返していった。