その間にも続々と軍隊は整列し、マルコス軍団長は第二王子に頭を下げる。

「では、私はこれにて。ハーケンブルグ公爵……馬車を一台用意してありますので、王都までの道のりにお使い下され」
「かたじけない、マルコス軍団長……では皆、お言葉に甘えよう」

 レクシオールはマルコス軍団長と握手し、リュミエール達の背中を押して馬車に乗せようとする。

 そんな背中に投げ掛けられたのは悲痛な叫びだ。

「――待ってくれ、リュミエール! こんなはずでは無かったんだ! サンドラが、あの悪女が私の心を惑わさなければ、今頃はっ!!」
「……カシウス様」

 驚くことに、それを聞いて足を止めリュミエールは踵を返した。

「お、御嬢様?」「リュミエール様、お待ちを!」

 引き戻そうとした二人の侍女を、レクシオールは何故か制止する。
 ぐっと何かをこらえた表情のまま。

 振り向きもせず自分の元へ歩み寄るリュミエールに、王太子は顔を輝かせて両手を広げる。