白馬に乗った王太子はドシャリと転げ落ちるようにその場に降り、重そうに甲冑を引きずりながらリュミエールに近づいてきたが……それを手前で遮る人影を見て、背中をのけぞらせた。

「ハ、ハーケンブルグ公爵!? なぜ、貴様が……!?」
「……どういう意味です? 私が先日の件絡みでリュミエールと王都に招聘(しょうへい)されたのは、王太子もご存じであるはずですが?」
「あ、いや……それは。そ、それにこれはどうしたことだ……」

 ()()()、カシウス王太子はこの状況に困惑している様子だ。
 そこへロベルト第二王子が進み出て、薄笑いを浮かべながら問う。

「兄上、一体こんな所まで物々しい装いで、どうされたというのです?」
「ロベルト、お前まで……!? そ、その者達をどうするつもりなのだ?」
「当たり前でしょう。このまま王都に連行して、拷問の上首謀者を吐かせます」
「ならぬ!」
「……? なぜです、この者達は公爵閣下のお命を狙った大罪人ですよ? それ以外の道などありますまい」
「ならぬと言っておるだろう! その者たちの身柄はこちらに引き渡すのだ!」
(こいつはなにを言っているのだ……?)

 レクシオールは眉を(ひそ)める。
 図ったように遅れてやって来て、彼がいることに驚愕しつつ……襲ってきた賊の身柄を引き渡せなどと……。王太子カシウスの行動は違和感塗れだった。