びっくりして振り返ったリュミエールの態勢が、ふいに崩れる。
 馬車全体が大きく揺れたのだ……そしてやがて、窓から見える風景が止まる。

「も、申し訳ありません……」
「いや……何かあったようだな。少し確認して来る」

 咄嗟(とっさ)にリュミエールの背中を抱き留めたレクシオールも不審に思い……彼女を下ろして側面の扉を開き、外に出ようとしたが……。
 
 ――ギラリ。

 扉が乱暴に開け放たれ、そこに突き出されたのは光る白刃。
 次いで黒い覆面を被った、冷たい瞳をした男達が馬車に乗り込んで来る。

「……公爵閣下とそのお連れ様でお間違いありませぬな? 申し訳ないが、拘束させていただく。抵抗すればそちらのご婦人たちがどうなるかお分かりでしょう」

 先頭の男がこちらを見回し、リュミエール達は息を呑む。

 おそらく御者や護衛もどうにかして排除されたのだろう。目立つのを嫌って少数で来たのが完全に裏目に出た。

「ひっ、外にも……」