茶会の事件から二週間も立つ頃、レクシオールとリュミエールは王城へと呼び出された。

 彼らは侍女のケイティやパメラを伴って北方にあるハーケンブルグ領を出発し、もう王都までは馬車で後数刻と言った所。

 そんな中、レクシオールは一通の()()に目を通すと、それを折りたたんで懐に入れ、隣に座る彼女を気遣う。

「王太子の命を救った恩賞を与える為であるとの事だが……こちらとしては気が休まらんな。リュミエール、大丈夫か?」
「は、はい……」

 ――彼はリュミエールには実家が廃嫡となり……家族は国外追放処分になったと伝えている。

 幽閉されたと告げただけでもひどく落ち込んでしまった彼女へ島流しになったなどと伝えれば、どこか加減を悪くしてしまってもおかしくはない。何よりこれ以上悲しい思いをさせたくないという彼なりの配慮だった。

「御嬢様、元気を出されませ。ほら、樹々も花のつぼみを芽吹かせ、春の訪れを寿(ことほ)いでいますよ……いつまでも暗い顔をしていても何も始まりません。お顔を上げて下さい」