いつの間に、サンドラが王太子に取り入って深い仲になったのかはわからないが……それ自体はもう納得できている。

 自分が女としての魅力に欠けているのは確かなのだろうし、彼女が王太子とああして仲を深めている間に、こちらは一言も会って話すこともできなかったのだから、努力不足を責められても仕方が無いことだ。

 だがせめてあのような形ではなく……素直にお心移りがあるなら、手紙でも良いから一言伝えていただきたかったと、リュミエールは悲しく思う。最初から価値のない人間と決めつけられていたような気がして、胸が苦しい。

(私はこれからこの家でどのように生きていけば……)

 リュミエールはなにより、王太子の妻になることを心から祝ってくれたセルバンとケイティに本当に申し訳なく思った。あの二人は彼女が王太子殿下に気に入られるように、色々とアドバイスや所作、身なりを整えたり、何をお好みであるか街で噂を拾って来たりと、一生懸命手伝ってくれていたのに。

 そんなリュミエールの辛そうな顔を見てもなお、オルゲナフは吐き捨てた。

「……陰気な面をしよって。だが、もうその顔を見なくて済むと思えばせいせいするわ! お前の新しい(とつ)ぎ先が決まったぞ……ハーケンブルグの冷血公爵の元だ。あの男、お前などの為に多額の支度金を支払うと申し出よった。大方、珍しい物を手元に置いて見世物にでもするつもりなのではないか? はん……」