だが、既にあの娘は、冷血と名高い銀竜公爵の元で仲睦まじい日々を過ごしているのだ。

 悔しい……悔しい!
 なぜリーベルト王国の次期国王である私が、このような苦痛を与えられねばならん!

「許せない……」

 嫉妬は憎悪へと塗り替えられてゆき……カシウスは、ハーケンブルグ公爵を強く憎む。

 そしてある時、残虐な考えが彼の脳裏から生み出された。

「そうだ……! 殺せばいい……」

 カシウスは口元をわななかせながら、震える拳を握る。

(公爵を亡き者にすればよいのだ……。そうすれば、まだ式を挙げておらぬ奴らの婚約は破棄され、帰る所を失くしたリュミエールに私が手を差し伸べれば……彼女を、私のモノにできる!)

 彼にはこれが名案に思えた。
 他の者はどうなろうと構わない……ただあの娘が欲しい。