「リュミエール……」

 彼が窮地に陥った時、真っ先に手を差し伸べてくれたのは、あの白い髪の聖女であった。

 彼女は自分の手が汚れるもの厭わず、王太子から毒を吐き出させ……苦しみにあえぐ彼の背中をさすり励まし続けてくれた。おかげで彼はこうして死から逃れることが出来たのだ……。

 それ以来、意識を取り戻した時に見た彼女の顔が脳裏に焼き付いて離れない。

「リュミエール……ああ!」

 カシウスは顔を覆い後悔する。

 なぜあの時、自分は彼女との婚約を破棄するなどと言ってしまったのか。
 そうでなければ、今頃はあの優しき聖女の隣で笑っていたのは自分だったというのに……。

「どうすれば、どうすればいいのだ……」

 身をよじりながら、自分のしたことを棚上げにしてカシウスは己の不幸を嘆く。

 リュミエールが欲しい……。