ここでレクシオールのことを褒めたたえても嫌みになりそうなので、リュミエールは感謝を告げるだけにとどめた。やがて席に着くのを許されたので、二人は並んで円卓に腰を掛ける。

 そこへサンドラが戻って来る……。別室で待機させているはずの侍女が後ろで茶器を抱えており、どうしても自分が動くのは我慢ならない性格の彼女らしいと、リュミエールは思う。

「あら、いらしてたのね。お二人ともお久しぶりですわ……リュミエールは公爵様の手を煩わしてはいませんか? なんにもできない子でしたから……」
(この女……)

 彼女は妖艶な笑みを浮かばせると、王太子の隣に座りそんなことを言う。
 レクシオールの眉間がぐっと内側に寄りかけたが、リュミエールが袖を引き、それを諫めた。

「ええ、彼女は良くしてくれていますよ。聖女の力など無くても立派にやっていけます」

 それにサンドラは冷笑を浮かべたが、それ以上の嫌味はいわず、侍女に指示をして王太子の前に茶器を用意させる。