だが彼はそれでは満足できず、兼ねてより信頼していたある貴族の男から持ち掛けられた投資話に手を出した……以前レクシオールにも持ち掛けた金山の所有権を、家令の反対を押し切り全て買い取ったのだ。

 その男は前から何度かオルゲナフに話を持ち掛け、土地の売買で少額であるがもうけさせてくれていた。だから信用できると判断したのに……それは取り返しのつかない大きな間違いだった。

 しばらくして男は連絡を途絶えさせ、オルゲナフはその貴族の屋敷の門を叩いたが……応対したのは全くの別人。そして誰に聞いてもそんな男は知らないの一点張りである。

 屋敷から摘まみ出されたオルゲナフは呆然とした。

 そしていつまで経っても金塊の売却益など、微塵も届けられる気配は無く……現地を訪れてまたもオルゲナフの膝は崩れた。そこはただの未開拓の山林で、権利書に記載された鉱脈やそこで働く鉱夫達の姿などどこにもない。

 刻々と借金の期日は迫り、数か月以内に返せなければ……この屋敷はおろか、抵当に入っている領地を全て手放し路頭に迷う事になる。

 妻や娘には伝えられていない。屋敷に仕える人間を大幅に減らしたが、それで浮く金額など焼け石に水だ。