「……ッ! 言うじゃないの。だけどねぇ、あんたなんてお父様の一声があればすぐに公爵閣下の元から引き剥がされて、また私に苛められる日々に戻るのよっ!」
「いいえ! 私は絶対にもうこの家には戻りません! なにがあっても彼のそばから離れないとそう決めたんです……レックスも同じ考えですから、きっと私のことを守ってくれます!」
「……なんて忌々しい! あんたが幸せになるなんて、絶対に許さないからねッ!」

 リーシアは顔を赤くして鬼のような形相でリュミエールを睨みつけると、荒々しく扉を閉めて部屋を出ていく。

「ふ~……」
「おっとっと……!」

 つい気が抜けてふらりと倒れそうになる彼女をケイティが支え、ウインクした。

「御嬢様、お見事でしたよ! 初勝利でございます……もうケイティのお守もいりませんね!」
「そんなことないわ……人と言い争うのって、大変なのね。あなたとレックスがいると思えなければ、とてもあんなことは言えなかったわ」

 すっかり精根を使い果たしたリュミエールは、床にうずくまりたい気分だった。
 だがまだまだ、メインイベントが後に控えていて、決して気を抜くことは許されない……。

 この茶会が終わり、ハーケンブルグ領へ帰りつくまで。