「なぁにケイティ? まさか私がこの子に危害を加えようとするとでも? そんな訳無いじゃない、母親が違うとはいえ、実の妹なんですもの」
「(どの口で……!) ……ですが!」
「どきなさい、侍女ごときが」
「うっ……」

 だが、リーシアは面と向かって批判できないケイティの胸を手のひらで押しのけると、前に出て薄ら笑いを浮かべる。

 この見下す瞳が真正面から向けられただけで以前は腰が砕けていたが、今回のリュミエールは引かなかった。ハーケンブルグ領での色々な体験が、彼女にわずかな勇気を与えていたのだ。

「あらぁ、今日は逃げないの? 私の姿を見るたびに部屋の隅で縮こまっていたというのに……」
「わ、私は……今日はレックスの、ハーケンブルグ公爵の婚約者としてここへ来ています。なにも後ろ暗いことなんてないのに、逃げる理由なんてありません!」
「なんですって……!?」

 そのはっきりとした反論に、リーシアは面食らう。
 ケイティも、リュミエールがこのように姉達に口答えをするのは初めてで、目を見張った。