レクシオールは背筋がぞわぞわするのを感じながら、それぞれと握手した。

「……此度はお招きいただき感謝する……お言葉に甘えて休ませていただこう、リュミエール、ご挨拶を」
「ええ、お父様、お母様、それにリーシア姉様も……ご健勝で何よりでございますわ」

 二人の対応に違和感を感じつつリュミエールは三人に頭を下げた。
 それを三人は笑顔で迎えたが、どこか空々しく本心でないことは明らかだ。

 別室へと移動し、しばし待機しようという時にレクシオールが目配せをした。少しオルゲナフと話をして来るようだ。

 リュミエールは不安だったが、今はケイティもそばにいる。
 心配をかけないように力強く頷き彼を見送る。

 そして客室で取り残された二人は、何とはなしに声をひそめ(ささや)き合う。

「なんでしょうかね、あの手のひらを返したような感じ……気味が悪いです」
「……わからないわ」

 心を入れ替えた……などということがあろうはずもないと、さすがにリュミエールでも分かっている……だがそれでも、心の奥のわずかな期待を完全に消すことができない自分が悲しい。