――フィースバーク侯爵家。

 数日の旅程を経て久々に帰還したリュミエールは、馬車の車窓から見えるその変化が気にかかった。大勢いた使用人の数は減り、屋敷の手入れも行き届いていないように感じる。

 何かあったのだろうか?

 その不安げな表情を気にしたレクシオールが、隣から声をかけた。

「大丈夫か?」
「え、ええ……だけど、少し寂れてしまったような。ね、ケイティ」
「そうですね。いくら傾いているとはいえ、ここまでひどくはなかったのですが……」

 敷地の一角に馬車を乗り入れると、そこにはオルゲナフと継母、リーシアの姿が待ち構えていた。だが……驚くことに三人は取り繕ったような笑みを浮かべている。

「やあやあ、良くおいで下さいました、ハーケンブルグ公爵殿。さあ、長旅でお疲れでしょう。別室でお休みください。リュミエールもな」
「噂にたがわぬ美しいお姿ですわ、お会いできて光栄です、ハーケンブルグ公爵。それにリュミエールも見違えるほど綺麗になって……お似合いの二人ですわね」