「フフッ……頑張れよ、レックス」
「ああ、お前もな……。今までのこと、感謝している」
「こちらこそ、楽しい時間だった。……それじゃ、雨が降ると困るから、もう行くよ」

 手を離すと、振り返らずにフレデリクはそのまま去ってゆく。
 扉は静かに閉じられ、レクシオールは椅子に座ってしばらくの間放心した後、グラスに酒を注ぎ……一気に飲み干す。

(ありがとうな……親友よ)

 ――そして、その日以来、フレデリクがこの城に訪れることは無くなった……。