自身と家族の軋轢(あつれき)のせいで、なんの罪もない彼が頭を下げなければならないなど、絶対に認められない。それならばいくら苦手な家族だろうと、顔を突き合わせた方がましだ。

「レックス……あなたが付いていてくれるなら大丈夫です。楽しい話にはならないかも知れないですけど……何を言われても気にしません」
「ああ……わかった。俺もお前を庇う盾位になら、なることは出来るだろう」
(御嬢様もしっかりとしてこられて……やはり公爵様の存在が大きいのだわ。日々花開くようにお美しくなられているし……。はぁ、セルバン様にもこのお姿を見ていただけたら、どんなにか……送ったお手紙が返ってこなかったから侯爵家をお離れになったのかと思うけれど、今どうなさっているのか少し心配だわ。向こうの家はどうなっていることやら……)

 ケイティは二人の姿を見守りながら、連絡の取れなくなった老執事セルバンと、再び訪れることになる侯爵家に思いを馳せた。