レクシオールと誓いを交わしてから数日のこと。
 リュミエールは魂の抜けたような日々を過ごしていた……。

(人は幸せ過ぎると、宙に浮いたようになってしまうと聞いたことがあったけど、本当だったのね……)

 ぽわぽわとした気持ちで、自室の窓際で日差しを浴びている今も、浮かんで来るのはあの日のことばかりで……あわてて自分の頬をつねって意識を引き戻す。

(御嬢様……今日も心ここにあらずなのですね。そんなに思い耽る位ならご自分から会いに行けばよろしいのに……)

 また、リュミエールを心配そうに見守るケイティも、そろそろリュミエールが一人立ちできるようにとあまり構いすぎないように手を出すのを控えている……そんな微妙な空気の中でのことだった。

 ノックの音がして、入室の許可と同時に扉を開いたのはレクシオールだった。
 最近はあまり見せなくなった彼の険しい表情に、二人は戸惑う。

「どうかなさったのですか?」
「……ああ。実は茶会の誘いが来てな。だが……エルにとってはあまり良いものではない」
「――もしや、御嬢様のご実家から!?」