女性を褒める台詞など知らない彼は、頭を描きながら小声で小さくつぶやくだけ。

「……ま、まあまあだな。いつもよりはいい」

 リュミエールの顔が少し曇り、ちっ、と舌打ちが後ろから聞こえたような気がしてレクシオールは後ろに向き直るが、そこには笑顔のパメラがいるだけだ。

「どこがどのようにいいのか、ぜひお言葉を頂けませんか? 公爵様」
(なんだ、この威圧感は……)

 そしてリュミエールの後ろのケイティももちろん笑顔なのだが、ただならぬ気配を発しており、前後を挟まれたレクシオールは小さく喉を鳴らす。ここまですればさすがに鈍いレクシオールでも察する。

(褒めが足りんということだな……くそ)

 だが、歯の浮くような美辞麗句などレクシオールの領分ではない……最近本で呼んだ知識なども、いざとなると中々出て来ないもので、結局素直に思っていた言葉を口に出す。
 
「……俺には女の服や化粧のことは良くわからんのだ……。だが、まあ全体的にいいと思う。俺は好きだ……可愛いと思うぞ」