「御嬢様……」
「でも、ケイティは私の面倒を見ているせいで、ずっとどこにも行けなかったのよね。ごめんね……あなたがお家から何度も戻ってくるように言われたことも知っていたし。私がいなければ今頃幸せな家庭を築いていてもおかしくないのに……」
「そんな、違います御嬢様! 決してあなたの為に私が自分の人生を犠牲にしたわけではありません! あくまで私自身がそうしたくて……」

 ケイティは泣きそうな思いをぎゅっとこらえてリュミエールを抱きしめた。こんな不敬をとっても、この少女は誰も罰したりしない。そんな優しい彼女だからこそケイティは、ずっと彼女を支えていたかったのだ。

「ケイティと離れたくはないけれど、でもあなたに女の人としての幸せを私が与える事はできないって……もっと早くに知らなければならなかったわ。自分のことばっかりでごめんなさい……」

「違うのです、御嬢様……」
「私、あなたの気持ちも大事にしたい。もしあなたが何かどうしようもない気持ちで苦しんでいるなら、それが整理できるまでレクシオール様にも待っていただくよう頼んでみるわ。……私が幸せになる時にはあなたにも笑って祝ってもらいたいもの……」
(そういうあなただから、私も、ずっと一番近くで見ていたかったんです……でもそれは私の勝手なんだわ)