「――ふぁ……あわわわわ、わぁ……」

 リュミエールは淑女らしからぬ大欠伸を漏らしてしまう。
 昨晩は早めにベッドに潜り込んだというのに、どうにも寝付けずに、眠気がようやく訪れたのは日が昇り始めてからだった。

 瞼をごしごしこすりそうになった手を慌てて止める。

 今日は、特別な日になるんだから。
 もし目を腫らしてしまったりしたら……レクシオールに笑われてしまうかも知れない。そんな小さなことを気にして、彼女は少しでも眠気を覚まそうと窓を開ける。

 まだ少し肌寒い風が意識を鮮明にさせてゆく。
 空には雲ひとつ見当たらず……出かけるのに絶好の日和になりそうだ。

 そしていつも通り扉がノックされ、二人の侍女、ケイティとパメラが入って来た。
 パメラはいつも通りのきりっとした笑顔だが、ケイティは見るからにどんよりした表情だ。