ケイティが二人に何があったのか知る由は無いが……公爵の方も仕事そっちのけ、とまでは言うまいが……それ以外のかなり部分をリュミエールの為に費やすようになり、二人の間にはどこからどう見ても恋人同士の雰囲気が確立されつつあった。

(いいことなんです……いいことなんですけれど、割り切れないわ~……)

 重い気持ちに肩を落とすケイティ。
 要は彼女……リュミエールを構うことが出来なくなって寂しいだけなのである。

 ……彼女がフィースバーク侯爵家に行儀見習いも兼ねてラーセル子爵家から送られたのは、もう八年ほど前のこと。それ以来年も近いこともあり、半ば姉妹のように接し、彼女を育てて来た。

 リュミエールが傍にいない日はほとんど無かったし、老執事のセルバンと共に小さな彼女の身を守る日々は厄介事も多かったが、ケイティの心に充実感をもたらしていたのも確かだった。

 しかしこれからは、その役目はレクシオールが引き継いでいくのだろう……。
 
(御嬢様が立派になられるのは嬉しいですけど、やっぱり私……す~ごく、寂しいです)

 不意に目頭が熱くなって来たケイティは、上を向き「はぁ~……」と濃い溜息をついてしまった。