その日起きてからずっと、ケイティは憂鬱な表情をしていた。

「ほら、ケイティ……あなたリュミエール様のお付なんでしょう? ちゃんと万全の状態で送り出して差し上げないと」
「わかってますよ……」

 ケイティとパメラは朝の支度を整える為、リュミエールの部屋に向かっている途中である。
 そして、なんと本日はリュミエールとレクシオールが初めて二人で外に出かける日なのだ。

 あれ以来、リュミエールと公爵の距離は急速に縮まりつつある。

 そして、彼女に急におかしな行動が目立つようになった。

 ケイティが先日の休みを利用して長い列に並び買って来た、ハーケンブルグ領内で飛び切り人気の菓子店の新作《竜のしっぽ》を前にしても……味はそっちのけでぼんやり物思いに耽っていたり、あちらこちらに視線を彷徨わせて頭をぶつけたり、何かを思い返して顔を赤らめたり……というような。

(……これはついに御嬢様に恋の訪れが、ということなのでしょうね……)