もうリュミエールは、こけることも、レクシオールの足を踏むことも無い。
 まるでこの世界に二人しかいないようにお互いは瞳を見つめ合い、心を預けている。

「もう言うことはありませんわね……素晴らしいですわ。踊りますか、フレデリク様?」

 僕はそれを見て、本当に嬉しかった。
 楽しそうに踊る二人を見て隣からパメラが尋ねて来たが、僕は小さく首を振り断る。

「ごめん、もう少し見ていたいんだ……」
「そう……そうですわね」

 パメラも隣で立ち、少し羨ましそうに二人を見つめる。

 そして二人は、長いステップを踊り切ると、名残を惜しむかのような淡い微笑みを浮かべ、伴奏の終わりと共に静かに足を止め……こちらに揃って礼をする。

 ――僕らは、二人に惜しみない拍手を送った。

「御嬢様、とてもお綺麗でした……!」
「お二人とも、お見事でしたわ!」 
「よく頑張ったな、リュミエール……!」
「レクシオール様のおかげです……!」