差し出そうとした手がまたもレクシオールに遮られる。
 そして彼はリュミエールを自分の方へ抱き寄せると、背中に庇う。
 
 そこまですれば、誰にでも察せられる。

(あ~、これはもう完全に心を奪われてるな。あのカタブツをここまで骨抜きにするとは、リュミエール……一体君はなにをしたんだい?)
「あ、あの……お二人ともどうしたんですか?」

 間で右往左往するリュミエールに肩をすくめ、両手を挙げて降参を示しながらも……僕はレクシオールに挑発的な視線を向けた。

「わかったわかった。それじゃあ二人で踊って見せてよ。どの位腕前が上がったのか見せてもらおうじゃない?」
「フン、望むところだ……ほらリュミエール、手を出せ」
「は、はいっ!」
「肩の力は抜けよ……」

 気合の入る彼女に、レクシオールは穏やかな笑みで答える。

(あいつのあんな顔は、初めてだな……)

 心地よいケイティの伴奏が開始して……二人は優雅なワルツにのせ、ゆっくりとステップを踏みはじめる。