母は俺の言葉を聞いて少しだけ笑顔を見せたが、その後はまるで素っ気なく俺を追い出そうとする。

 俺には、なぜ母がこんなに(かたく)ななのかがわからないでいた。

『母様、俺は……母様に病気を治して欲しい。この気候では体温は奪われ、どんどんと体が弱って行くばかり……。南は温暖で体に良い作物も育つと聞きます! そちらにお移りいただいてお健やかな生活を送り、俺達を安心させて下さいませんか……?』
『ふふ……レックス、ありがとう。でもね、この病は治るものではないのですよ。……わずかばかり永らえたと言って愛する家族の顔も見れず、何も残せず一人で寂しく逝くのであれば、何の為に生きているのかわからないではありませんか』

 そう言って、母様は儚い笑顔を見せる。

『お前が頑張っていることは、父上やお医者様から日々伺っています。だかそれだけで私には十分なのですよ。でもね、もしお前までこんな病にかかってしまっては……私がどれだけ悲しむか、わかってくれるでしょう?』
『……ですが』