再びレクシオールの鋼のような腕に体を委ねながら焦りを募らせ、リュミエールは小公爵が待つ方へ歩いてゆく。

 時々振り返りながら進む銀の猫の背中を追って、かなり長く歩かされた二人がやがて辿りついたのは敷地の隅の一角だった。

「……ぁ」

 遠くに十字架や、一抱え程の石の群れが見え、レクシオールは一度足を止めた。
 気のせいか、よりいっそう顔色が優れなくなったように思える。

「あれはもしかして……お墓ですか?」
「ああ、そうだ……」

 なんとなくリュミエールは察し、レクシオールはかすれたような声で説明する。
 あの一角は共同墓地で、公爵家の人間やこの城で生まれ他に身寄りのない者達の墓所となっているらしい。

 止めた方がいいかも知れない……。
 白い顔に唇を引き結び体を強張らせる公爵に、リュミエールはこれより進むのはやめておいた方がいいのではと腕を引いた。