(あうっ……!)

 気もそぞろになったリュミエールはつい足元を(おろそ)かにしてしまった。

 小石に蹴躓(けつまづ)いて体がぐらりと揺れ……リュミエールは痛みを予想して目を強く瞑る。だが、それは途中でしっかりと支えられた。

「馬鹿者……しっかり前を向いて歩かないからそうなるんだ」

 当たり前である……今片腕ははレクシオールと繋がっているのだから。
 身体は地面には付かず、そして目を開けると彼が腰を抱き留めてくれたのだとわかった。

「……ごめんなさい」

 流れてきた銀色の髪が首筋を撫で、くすぐったさにリュミエールは背筋を震わせる。
 
 静かな無表情をたたえる彼の瞳を見て、リュミエールは深い海の底を覗き込んだような……吸い込まれるような感覚に陥り、目が離せなくなった。

(理由がないなら、どうしてこんなに悲しそうな瞳を……あなたは)