「こいつはな、たまにこうして俺が仕事しているかを偉そうな顔で覗きに来るのだ……。ほれほれデブ猫、ついてこれまい。ハハ……高い物ばかり食っているからそうなるのだ。もっと動け」

 それは最近見せてくれなくなった、自然な表情だった。

 そんな彼の顔を見ていると、胸の奥がじわっと暖かくなってほっとする。

(いつもこんな風に楽しそうに笑ってくれていたら、嬉しいのにな……)

 だがレクシオールはリュミエールの視線に気づくと、その表情を元の仏頂面に戻してしまった。

「フン……まあ、あまり人前では言うなよ。そらデブ猫、俺は仕事がある。リュミエールに乗っかって、どこへなりとも行ってしまえ」

 彼は小公爵をぐっと持ち上げてリュミエールに渡そうとしたが、銀色の猫は彼の袖口を噛んでそれを拒んだ。

「――こいつっ!」
「ニャウゥ!」

 小公爵はレクシオールが慌てた隙に地面へ飛び降りると、また先程のように少し離れたところで一声鳴く。