もの言いたげな視線でじっと見つめてくる小公爵に何かを感じ、リュミエールは部屋から出る。すると彼はまた少し遠ざかって、彼女を招くように一鳴きする。

(どうしたのかしら……ついて来いっていうことなの? ちょっとおもしろそうだわ)

 ぽってりとした身体の割に音もなくしずしずと歩いていく姿は、中々優雅に見えなくもなく、リュミエールはついつい口元を緩ませ、彼の後ろに続く。

(ケイティがいないけど……大丈夫よね)

 たまにはゆっくり休んで貰いたいとケイティに伝えたら、「何か美味しいものでも探して来ます!」と彼女は街に買い物に出ていった。この城の人々は友好的だし、何かあったらパメラを頼ればいい……少し不安ではあるが興味の方が勝り、城内なら自由に歩いてもそう見咎められることも無いだろうと、小公爵の後を追う。

 その内にたどり着いたのは……見覚えのある扉の前。

「ここは……公爵様の執務室だけど」