国の歯車の一つとして生き、公爵家の嫡男としての役割を全うしなければならないなら……やはりもう誰かを愛してはいけない。これ以上失えば、きっともう心が元に戻らなくなる。

 そうなれば、きっとこの領地や国の大勢の人々が、同じように大切な物を失うのだ……。

(……それは、駄目だ。誰にもそんな思いをさせてはいけない)

 彼女を悲しませてでも距離を取るべきだ。
 これ以上辛くなる前に……冷たい顔と言葉で。

(許してくれ……リュミエール)