レクシオールは目覚めたものの大事を取り、数日はベッドの中で休む日々が続く。リュミエールは毎日彼の元を訪れ、かいがいしく世話をする。

 最初は嫌がった彼も、リュミエールが「この城で今一番手が空いているのは私です。他の人々のお仕事の邪魔をなさるのですか?」と言うと、渋々従った。

「体ぐらい自分で拭ける!」
「でも、お背中に届きませんもの。公爵様ともあろうお方のお体です……すみずみまで綺麗にしませんと。これもこの家に生まれた方の責任なのだと思いますわ」
「ぐっ……好きにしろ」

 どうやら、彼は仕事とか責任とか言う言葉に弱いらしい。そんな風にリュミエールが言うと、彼は悔しそうに背を向ける。

 そして終わるとすぐ顔を赤くしてそっぽをむき、「もういいだろう。あまり俺に構うな」と言ってベッドに潜り込んでしまう……そんな不器用で意地っ張りな少年のような姿が、彼女には可愛らしく思えた。

 手慰みになるかとケイティが図書室から借りて来てくれた本を読みながら……ほとんどが椅子に座って彼の背中を眺めているだけだったが、不思議とリュミエールにはそれが苦痛では無かった。