しばらくは大人しくなっていた王太子だったが、体調が回復して気力も戻ったのか、またも私を呼びつけてひどく罵った。

「お前、私をこんな目にあわせて、無事でいられると思っていないだろうな……!」
「お、お許し下さりませ……。つ、次の案を持って参りましたので! 次ことは絶対にハーケンブルグ公爵めを、絶叫させて御覧に入れます!」

 私は王子の恨みがましい表情を内心鼻で笑いとばすと、あわてたふりで平伏する。その言葉に王子の唇は歪み、先を促した。

「……いいじゃないか。そこまで言うのならやってみたまえ。ではどのようにして奴を陥れるつもりなのだ?」
「茶会と称し、ハーケンブルグ公爵とその婚約者である令嬢をフィースバーク侯爵家に集めてはいかがでしょう。そこで、サンドラ嬢に協力してもらい仕掛けを施すのです。茶に薬でも溶かし込めば、多少武勇に優れていようと……」

「なるほど……奴の苦しむ様が間近で見られるというわけか……! よしんば、上手く行かなかったとしてもあちらの家のせいにすれば良いしな」
「そこまでは思いつきませんでしたな……さすがカシウス様は知恵者にございます。あのような見栄えだけの若造に及ぶところではございませぬ」
「ふふふ、そう褒めるなよ」