フレデリクは目を覚まさないレクシオールの肩を軽く小突く……まるで仕方なく弟の面倒を見る兄のように。

「……それでも、私が負担をかけてしまったのは変わりありません。本来彼を支えないといけない立場なのに……婚約者失格です」

 どうしていいかわからずに顔を覆ったリュミエール。
 その時、小さな呻き声が上がった。

「うぅっ……は、は……うえ、なぜ……」
「レクシオール様!?」

 彼女は素早く反応して顔を上げたが、レクシオールが目を覚ました様子はない……どうやらうわごとを呟いただけのようだ。

 ベッドの傍らの椅子に座り直したリュミエールは、彼の手が何かを探すようにわずかに持ち上げられているのを見て、思わずそれを取った。

 ……だが、握り返す力はいつもと違って弱々しく、それが寂しい。

「……私、しばらく彼を見ていたいです。ケイティ、お水を汲んで来てくれるかしら。お着替えとお体を拭く手伝いをして差し上げたいの」
「御嬢様自らですか? ……そ、それは」