「――――ゥッ……!」
「きゃっ……レクシオール様……? レクシオール様――!?」

 ――ドサッ……。

 公爵がハーケンブルグ領へと帰還し、再び忙しい毎日を送り始めた時のこと。

 ダンスの練習に付き合ってくれていたレクシオールが、急に体を預けるようにして意識を失くし、リュミエールごと倒れ込む。

 彼女はその体を何とか支えようとしたが、頭を打ち付けないように庇うのが精一杯だった。

「レックス!? どうしたんだ……!!」

 フレデリクが慌てて駆け寄り、赤くなったレクシオールの額を触る。
 彼は白い顔で意識を失くし、顔からはふつふつと珠のような汗が噴き出している。

「熱いな……とりあえず医務室へ運ぶから手伝ってくれ。こいつ重いんだ……!」
「わ、私が手伝います……!」

 比較的背の高いケイティがフレデリクと両脇を支え、彼を引きずるようにして医務室へ運ぶ。

(レクシオール様、どうして……)

 パメラに助け起こされたリュミエールは、深刻な顔で二人を追ってゆく。

 騒がしく移動する彼らに城の住人達が驚きの声を上げながら道を開ける。
 大変なことになってしまった――。