……一方その頃カシウスは、勝負などそっちのけで遠くに隠れ、遠眼鏡でレクシオールの様子を伺っていた。
 
「フッフッフ、犬どもに追われて精々無様に逃げ回るがいい……。おっ……!? クククク、面白いものが見られるぞ!」

 カシウスは二頭の狼犬がレクシオール目掛け走っていくのを見つけ、彼が逃げ回る姿をこの目に収めてやろうとほくそ笑む。

 が、しかし……。

「お、おいっ! や、やれっ! そこだ……嚙みちぎれ……ああっ! な、なんと言うことだ……その場で二頭とも仕留めてしまうとは。ええい、くそっ、くそっ!」

 うまくいかない苛立ちに彼はその場の粉雪を蹴り散らす。
 しかもあの公爵は、その仕留めた狼犬を鞍にくくり付け、更なる獲物を待つつもりのようだ。

 そこでカシウスは気づいた……自分が不利な状況にあることに。

「奴があんなに強いとは……。ちょっと待て? このままでは私が狩り勝負に負けてしまうではないか……こんなことをしている場合ではない!」