『――懇意にしている商人から、ある金山の権利書の一部を譲ってもらいましてな』

 話によると、各自が支払った土地代に応じ、その山で採掘された金の売却益が月ごとに支払われるという内容だったが、どうにも胡散臭いものを感じ……俺はしばし検討させていただくとだけ告げてその話を打ち切った。

 血縁を結ぼうという間柄だ……そう邪険にもできないが、リュミエールとの結婚がうまくいくまでの付き合いにしておくのがこちらの身の為だろうな。

 ここに来るまで見かけた領民達の姿も、表情は暗く冬場だというのにろくに寒さも防げないようなぼろを纏うものが多かった。……これだけで判断するのもあまり良くないが、うまく領地を運営出来ていないような気がする。

 俺は憂鬱な気持ちをひた隠しにしながら、しばし彼らと世間話に興じるふりをした。

 だがこいつらからは、金の話と女の話しか出て来ない……仮にもこの場にはルビディル殿を含め侯爵以上の大貴族が集っているというのに、揃いも揃って自分達の欲絡みの話ばかりではないか……。悪いとは言わんが……もう少し実のある話も含めてくれ……。

 そんな中で王太子が、唐突にこんな提案をする。