姉二人はリュミエールを放って自分達はさっさと友人の輪の中に入ってしまい……物珍しい容姿で目立つ彼女は会場の真ん中で立ち尽くした。

 頭が真っ白になり、のぼせたように顔を赤くしながら、それでも何とか人の輪の中に加わろうとはしたのだ。だが勇気を出してその後に話しかけた相手が不味かった。

『あ、あのっ、私、フィースバーク侯爵家の三女であるリュミエールと申します。よろしければお名前を聞かせていただけませんか?』

 その人物はリュミエールより幾つか年上の、薄紫の髪をしたきつめな顔立ちの少女だった。出来るだけ丁寧にあいさつをしたつもりだったが……彼女は家名を聞いた途端、口元を覆っていた扇をピシリと閉じ、リュミエールの顔に向けて突き出す。

『数百年も前の功績でかろうじて貴族に名を連ねているようながらくたが良くもまぁ、大きな顔をして出て来られたものね……恥を知りなさい!!』
『ひっ……』

 そのあまりの剣幕に、リュミエールは真っ青になってよろよろと遠ざかると場外へと逃げ去ってしまい……そのままセルバンが見つけに来てくれた夕方頃までずっとしゃがみ込んで泣いていた。