だが、弱音など吐くつもりはないし、領民にもあいつらにも心配などさせない。……特にあの軽薄野郎にはこれ以上大きな顔をさせてたまるか。

 全て自分でやればいいだけの話だ、その為に俺は……。

 ――カサッ。

 机の上に置いてあった一通の書状に手が触れ、俺は再度目を通す。

 それはリュミエールの実父、フィースバーク侯爵オルゲナフ氏からしたためられた狩猟会への誘いの手紙である。王太子とそのお目付け役の宰相も呼ばれているようだ。

(あの王太子も同席か。あまり話の弾む面子とは思えないが……仕方あるまい。仮にも婚姻関係となる家同士、波風立てないに越したことは無いからな。しばらく練習はお預けだ……)

 すでに返事は送り返し、数日後の会に向けて明日から発たねばならない。
 不在の間にまた積み上げられる仕事を予想し、うんざりしながら肩を回すと……少しでも片付けて置くために俺は机の上の仕事に(かじ)りつき始めた。