公爵家での新しい毎日が始まり、リュミエールはこれまでとは違う生活に戸惑っていた。

 侍女のパメラがついてから、ダンスやマナーの指導を受ける以外は、比較的自由な行動を許可され、屋敷の限られた範囲で生活することしか許されなかった以前とはうって変わって多くの人々と接することになった。

 食事時もいつもでは無いにしろ、ケイティやパメラなどと一緒に……たまにはフレデリク、レクシオールやロディアなども顔を見せてくれ、彼らと一緒に食べる丹精(たんせい)込められた料理には心も体も温められる。

 ただなぜかとても量が多く、頑張って食べているのに度々残してしまうことだけは心苦しく思うが……それ以外は願っても無い程の好待遇だ。

 そしてある時、彼女は礼拝堂でため息交じりにこんな事をに口にした。

「……幸せになるって、不安なことでもあるのね」
「どうなさいました、リュミエール様」

 礼拝が済み、人が()けた後ポツリと漏らした言葉にシスター・ロディアの首が傾く。彼女の水色の目はいつも穏やかに細められていて、見るものに安心感を与えてくれる。