「ああ、長年様子を見て来たが、兄上は王族の立場を自分の権威を見せびらかす為の飾りか何かと勘違いしている。あの人はそれに付随する王の責務を果たす気などさらさらないだろう。そんな人間に私達の運命を任せるわけにはいかない……そうだろう?」
「その通りでございます……第三王子もまだ年若く、国のかじ取りを担えるのはもはやあなた様をおいておられません。このルビディル……この場にて忠誠を誓わせていただきます」

「ああ……私も多くの貴族達に内々に働きかけをおこなっている。兄に個人的に怨みを持つ者も少なくないようだしな。ルビディルには彼らの取りまとめを行って欲しい。くれぐれも彼には知られぬように頼むぞ……」
「わかっております……私の配下を総動員し、秘密裏に働きかけを行いましょう。そうなりますと、今回の件、多少王太子の不興を買うように計らってもかまわないということでしょうか?」
「やり過ぎは困るが、公爵の迷惑にならないよううまくはからってくれ」

 私はこの報告を受け歓喜したが……それとは別にたった一つだけご忠告させて頂かねばならない事があり、余計だとは思いつつも口添えしておく。

「かしこまりました……ですが、ロベルト王子、一つだけ言わせていただきたい。そろそろあの様に姿を変えて外に出られるのは……」
「わかっている、もう終わりにするつもりだよ……」
「ならばこの老いぼれに言うことはございません……俄然やる気が出てまいりましたぞ! ではすぐに取り掛かります、失礼!」 

 これで心置きなく、自らの職務を全うできる。
 ついに第二王子が奮起しあの王太子を追い落とす決意をなされたのだ……ならば我々はそれに従うまで。そしてもはや彼に気を遣う必要もない……。

 私は明るい顔で第二王子の私室を後にすると、カシウス王太子を懲らしめる策略を実行に移すべく段取りを練り始める。

 この口元の緩み……しばらく止まらなくなりそうだ。