時計を指し示す。 「え、良いの?」 「ああ、それが良い」 店長の了承も得て、男性は頭を下げた。 「助かります。ありがとう」 「いいえ、家もそっちなので。ラーメン冷めちゃうので食べてください」 「いただきます」 30分に店をあがると、店の外に彼は立っていた。足が長いなあ、と見ていれば、こちらを見る。 「こっち?」 「あっちです」 自転車を押して坂を上り始める。急にそれが軽くなり、振り返れば荷台を押してくれていた。 「大丈夫で、ちょ、速い!」 「あはは」 朗らかな笑い声が聞こえる。