ムショうの


 好きなもの、教えて。わたしがそう言うと、アオイは笑った。

 その笑顔は、とてもきれいだった。すきだと思った。


 思いやる優しさが、きっと、無償の愛の種になる。

 あげた分ばかり、考えなくていいね。

 もらう分とあげた分の、釣り合いのことばかり気にしていたら、きっとなにも生まれないね。

 とても難しくて、うまくいかずに枯れてしまうこともたくさんだけど。

 わたしたちは自分に必要な水は残しながら、すこしずつ、できる範囲で、水をやっていけば、いいんだ。今は、それで。


 ・・・ね、うのちゃん。




 教室にたどり着く。一緒に登校してきたわたしたちを見て、からかいの声が飛ぶ。

 笑ってすりぬけて、「おはよう」に「おはよう」を返して。

 駆けてきたサユキが言う。

「ドラマ、あっけなかったねぇ~!」

 わたしも笑って、答える。そうだね、最終回ってそんなもんだよね。次なに見る?ああ、あの宣伝のやつ、おもしろそうだよね。

 何人かと軽い会話をして、一番後ろの席に座る。

 もうじき始まる授業。チラチラと席を埋めていく、黒頭たち。

 窓の外に視線を移す。一面の、青空。ドライブしたときよりも、もっとあざやかな青。

「こまりーっ!どこぉー!?」

 目を閉じる。
 青空。ひまわり畑。幼い日の、うのちゃんが見える。

 ひまわりの背丈にかくれてしまったわたしを、うのちゃんが捜している。返事をしないわたし。焦る、うのちゃんの声。

 息をひそめて笑うわたしが、ひまわりをふるわせる。そのふるえに気づいたうのちゃんが、太いくきをかきわけて、わたしの元にやってくる。

 そして笑う。オレンジと黄色と、金色をまぜた笑顔が、しゃがんだ頭にふってくる。

「見つけたぁ、こまり!!」