ムショうの


 ううん、と首をふる。
 わたしが笑うと、アオイはホッと表情をくずして。

 わたしが見つめたままでいると、ちょっと照れはじめて、口元がゆるむのを悟られないように、唇を頑張って結んでいて。

 ねえ、アオイ。

 アオイのそういうかんじ、貸してくれたCDの、悪ぶったギターの旋律に似ているね。

「アオイ」
「…ん?」
「わたし、アオイのそういう、ちょっと照れた顔、好きかもしれない」

 そう言った瞬間、アオイの顔はちょっと、じゃなくなった。ちょっと、じゃない。すごく。

 あわてたアオイは、思いきり自転車を倒した。コントみたいな音がして、そばにいた生徒たちが振り返って、わたしは笑った。

 アオイは、耳まで真っ赤だった。

 ちょっと、じゃなく、すごく照れた顔。
 好きかも、じゃなくて、とても好きだ。


 アオイと、わたし。教室までの道のりを、一緒に歩いた。

 歩き慣れた廊下は、雨が降ったあとみたいに、ピカピカ輝いて見える。

 アオイのカバンにつけられた野球バットのキーホルダーが、はずむように揺れている。まるでスキップしているみたい。

「ねぇ、アオイ」

アオイがわたしの方を向く。一回転しそうなほど、揺れるキーホルダー。

「ん?」
「今度のデート、CDショップに行こ。そんで、DVDも、借りよう」

 わたしからの提案が珍しかったのか、アオイは目を丸くした。真ん丸の中にうつる、楽しそうなわたしの顔。

「こまり、何がみたいの」
「アラジン」

 間をあけずに出てきた答え。

「わたし、すごく好きなの。ね、アオイは?」