ムショうの



「CD、ありがとう」 

 月曜日の朝。わたしは教室に行かずに、自転車置き場に立っていた。

 いつもより早い時間。風で髪を乱して登校してきたアオイは、わたしの姿を見つけて目を丸くする。

 そして、わたしが差し出したCDを、あわてて前髪をなおしながら受け取った。

「ありがとう、アオイ」
「あ…えと、ハイ」

 なぜか敬語のアオイ。アオイと話そうって決めていたわたしはいいけれど、いきなり出迎えられたアオイはずいぶん面食らっているみたいだ。

 まだ状況を飲み込めていないアオイの顔をチラリと見ながら、思う。

 もし冬だったら、きっと風にさらされて、鼻のてっぺんは赤くなっていただろうな。

 でも、今は夏だ。制服のカッターシャツが、白くゆれている。

「わたしね、七曲目が好きだった」

 目の前の、いまだ戸惑っているアオイに、告げる。

 電話のときは、思わずウソをついてしまったけれど。ちゃんと聴き込んで、見つけたから。

「四曲目もいいけど、七曲目、一番好きだよ」

 CDケースにかけられたアオイの指が、ピクリと動く。

 わたしが見上げると、おどろいて目線をずらすアオイ。わたしは言った。

「…メール、ごめんね。休みの間、返さなくて」
「いや…」

 自転車のハンドルをにぎる手に力を込めて、アオイはわたしを見た。

「うん、おれも。なんか、ごめん……ごめんな」