ムショうの


「…ミドリくんてあだ名だったの?スイカだから?」
「ふふ、ホントにそういう名前なの、緑井くん」

 ミドリイのイを強調して言う、うのちゃん。

 明るい顔でふふ、なんて笑っているうのちゃんを、わたしはすごく不思議におもった。

 もう思い出したくもない、とか、飽き飽き、とか。うのちゃんの様子からは、そういうものは感じられなかった。

 まだどこかあたたかい、レンジから出してしばらくしたおかず。
 うのちゃんから出た「緑井くん」は、そんな響きだった。

 …どうしてなんだろう。

 わたしは、じっくりとうのちゃんを見つめる。

 うのちゃんは今まで、たくさんの男の人とつきあってきた。わたしの何倍も。

 でも、そのぶん、何倍も別れを経験してきたはずだ。

 そう考えたら、なにもかもが不思議だった。

 なにごともニコニコ、いいじゃんいいじゃんって受け入れてしまううのちゃん。好きだよ、いいよーって。なのに、どういうキッカケで別れるんだろう。

「…うのちゃん、てね」
「うん?」
「その…今までの彼氏と、どんな理由で…別れたの」

 急に、こわばった声になる。
 カレシ、の響きに、自分の現状が重なったからかもしれない。

 アオイの顔が、声が。すうっと、わたしの中に入り込んだまま、どこにもいけないまま。お腹の底で回っている。

 放課後のことも、キスのことも。思い出してしまいそうで、わたしはぎゅっと目をつむる。こぶしを作る。