ムショうの


「うのちゃーん・・・?」

 ささやくような声で、言った。

 薄闇のなか。うのちゃんは、床に落っこちてはいなかった。

 ちゃんと、その体はベッドに横たわっていて。

 うのちゃんのまぶたは、開いていた。

 ユラユラリ。夜の、深海の。

 うのちゃんは、さっきのわたしと、そっくり同じ目をしていた。

 驚いて、その場に固まる。わたしのとは違う部屋の香りが、鼻腔に流れ込んでくる。

「こまり…?」

 うのちゃんが、体を起こした。黙って立っているわたしに、言葉が続けられる。

「…どしたの、こまり?」

 すこしかすれた声。

「……ううん、あの…音が、したから」
「え?」
「ううん、なんでも…」

 笑顔を抜かれたようなうのちゃんに、ドキリと心臓が跳ねる。

 出て行こうか迷ったけれど、部屋に入り、後ろ手でドアを閉めた。
 一歩進んだだけなのに、さらに強く、うのちゃんの香りがした。

「あの…」
「……」
「なんか…」
「うん」
「…なんかね、寝れなくて。ちょっと…しゃべってても、いい?」

 雰囲気がいつもとちがう気がして、相手はうのちゃんなのに、戸惑う。

 うのちゃんが足を下ろして、ベッドのはしに座った。そして、わたしに微笑む。

「…うん!おいでー」

 ポンポン、と。ここだよ、とたたいて示されたスペース。

 それはいつものうのちゃんで、わたしはとてもホッとして、となりに腰かけた。

 おしりを沈めるベッドのスプリング。わたしのものより、硬い。