ムショうの



 布団に戻っても、眠気はやってこなかった。

 夕方に寝てしまっていたせいだろうか。ケータイの電源は知らない間に落ちていて、そのまま。

 生気を失ったケータイを持ち上げる。ある程度の重さを持った、手のひらの中。

 親指を押し付けて、シートの間に入り込んでいた気泡をつぶす。
 そして、ケータイの黒い画面にうつった、自分の顔を見つめた。

 ゆらり。目、だけ。
 せいいっぱい、暗闇から光を取り込み、波打っている。

 ゆらゆら、ぎらぎら。なんだろうな。夜の金魚みたい。
 金魚の尾ひれ。すごく不健全なかんじ。

 …うのちゃんはきっと、こんな目をしないんだろうなぁ。
 そんなことを考える。

 なんでわたしたち、こんなにちがうんだろうな。プラスと、マイナス。率直簡単と、嫌なくらい複雑。

 うのちゃんならよかった。うのちゃんみたいに、考えられたらいいのに。頭のなか、直列回路。そういう仕組みになっていればいいのに。

 深くため息をついてしまいそうな、そんな時だった。

 ゴン、と。

 隣の部屋でなにか、動く音が聞こえた。さっきまでずっと静まり返っていたから、とても驚く。

 …あれ。うのちゃん、まだ起きているんだろうか。

 半分体を起こして、首を傾げる。

 いや、もしかして、寝ぼけてベッドから落ちたのかもしれない。
 うのちゃんならありえる。大丈夫だろうか。
 心配になって、音を立てないように、自分の部屋を出る。

 向かって正面にある、うのちゃんの部屋。

 ドア下のすきまから見える、部屋のなかは暗い。すこしだけ、ドアを開けてのぞいてみる。