ムショうの



「こまりーっ!ごっはっんっだっよー!!」

 そのまま眠っていたわたしを起こしたのは、元気なうのちゃんの声だった。

 目を開けると、部屋の中はすっかり真っ暗になっていた。二時間少し、寝てしまっていたみたいだ。

 ムクリと起き上がり、物にぶつからないよう足をさまよわせてから、床に足をつける。
 冷たいとぬるいの間の温度が、足裏に溶け込む。

 部屋を出ると、あたたかいシチューの匂いがした。

 一段一段、降りていく。階段の下で、ニコニコ顔のうのちゃんが待っている。

「よく寝てたねこまりー!夕飯ね、シチューだよシチューっ!!ひっさしぶりぃ!」

 うのちゃんのはじける声に、急に現実に引き戻されたような気分になった。べつに、夢を見ていたわけじゃないけれど。

「…うのちゃん、今日遅かったね」
「え?…ああ!うん!帰りのこと、ね!!いろいろ歩き回ってさー、やっばい!ヒールでたくさん歩くもんじゃないよね、足のツメ変な色になってる!!」

 うのちゃんは足をあげて、変色した親指のツメを見せてくる。

 正方形に近いかたち。たしかに、そこに食事前に見たくない惨事が起きていて、わたしは顔をしかめた。

 起きぬけで、あまり食欲がわかなかったけれど、一杯分のシチューと、茶碗に入れられた軽めのご飯だけはどうにかつめこんだ。

 にゅうっと胸の下に出てきた胃に、体の重さが増す。

 だるさがぬけないまま、順番にお風呂に入ったあとは、うのちゃんと例のドラマを見た。

 いつの間にやら、ワンクール終わりの時期だったらしい。

 今日が、最終回だった。